「吃音に悩む人がゆるく繋がれる場を」元美大生がつくる“旅する当事者会”

吃音で話すことに不安を感じているあなたへ。

「自分だけうまく話せないのでは」と悩むことはありませんか?

今回のインタビューでは、元美大生のさがみさんが、自身の吃音体験や美術の大学・アルバイトでの葛藤を語ってくれました。

笑顔が印象的で、物腰のやわらかさが伝わるさがみさんは、音楽が大好きでコブクロの曲に長年励まされてきたことも。

SNSや全国交流会を通じて同じ悩みを持つ仲間とつながり、「逃げてもいい」という考え方を大切にしながら、少人数制で安心して話せる当事者会を立ち上げ、各地で活動されています。

「今でもどもるし緊張する」それでも勇気を出して行動するさがみさんに、オンラインインタビューでお話を伺いました。

目次

自己紹介

画像提供:さがみさん
2025年4月撮影

名前や年齢、職業を教えてください。

さがみです。年齢は今年23歳になります。

今はフリーターでして、コンビニと小学校でアルバイトを掛け持ちしています。

美術系の大学に行きましたが一旦中退して、学費が貯まったらまた復帰したいなと思っています。

趣味や好きなことを教えてください。

音楽を聴くのが好きでして、コブクロのファンになってもう12年目くらいです。

君になれ”という曲が、イントロもカッコよくてメッセージ性も強い曲で、特に好きです。

ほかにもカラオケ、美術館、回転寿司なども好きです。昔からお寿司が好きでして。

吃音歴

吃音を自覚したのはいつですか?

吃音を自覚したのは中学2年生の頃です。

親から「最近よくどもるね」と言われて、調べたら「吃音」っていうものがあると知って、その時自覚しました。

症状が出始めたのも中学生の頃ですか?

それ以前は自覚してはなかったので、詳しくはわからないですが…。

もともと人見知りがちで、人と話すのが得意なほうではなかったです。

でもそれまでは、吃音が原因で困ったことはなかったと思います。

中高生のころ

画像提供:さがみさん
『訪問者』(写真/iPhone13/2024年)

自覚してから何か変化はありましたか?

中学時代は音読ではどもっていなくて、原稿などを見ずにアドリブで話す時に、連発や難発の症状がでていましたね。

ちょうど中2の時に生徒会の副会長に立候補して、朝の全校集会や行事の連絡事項、3年生を送る会など、時々みんなの前で話す機会がありました。

高校受験の面接とかもどもりまくりで、なかなかスムーズに話せなかったです。

学生の時、大人に支援を求めましたか?

高校の時が一番吃音の程度がひどくて。

スクールカウンセラーを時々受けたり、吃音の病院とかに行きたいと親に訴えかけたりしました。

結局病院に行かなかったのですが、親が乗り気じゃないというか、そこまで重く受け止めてくれなかった感じですかね。

家でも普通に時々どもるんですけど、病院へ行くほどとは思われなかったんだと思います。

部活の美術部とか陶芸部で自分の好きな美術の作品をつくることで、いくらか吃音で話せない分うちこめたというか。

心の拠り所は制作活動だった感じですね。

友達に相談することはありましたか?

吃音があること自体は伝えていましたが、相談まではしていなくて。

やはり、吃音を持っていない方に吃音についての相談をしても、共感を得るのが難しくて困らせてしまうのではないかと、控えてしまいますね。

大学入学とアルバイト

さがみさんオリジナル画像
画像提供:さがみさん

大学生活はどうでしたか?

専攻が美術でして、そのなかでも1年生まではデッサンとか油絵とか絵画系のことをやっていたんですけど、2年生から映像や写真のコースに変更しました。

大学の授業とか人間関係では、大きな問題ごとはなかったです。

でも入学と同時に始めた、家の近くのコンビニでのアルバイトが、結構自分の人生の中で大きな転機になったと感じていまして。

初めてのアルバイトだったのでしょうか?

アルバイト自体は初めてではなく、高校2年の時に回転寿司のキッチンのアルバイトをしていました。お寿司が好きで申し込んだのですが、任されたのは揚げ物や天ぷらなどを扱うフライヤー担当でした(笑)

裏方なのであまり話さないかと思っていたら、他の握りとか軍艦とかの人といろいろ連携を取らきゃいけない場面が割とありました。

そこで伝達に時間がかかってしまったりして。それでも忙しすぎて注文がどんどん貯まっていくので、自分自身も焦って他のミスにも繋がって店長に怒鳴られたり。

けっこう精神的ダメージを受けて1〜2ヶ月でやめてしまいました。

その時から若干バイト自体にトラウマがあったのか、なかなか次のバイトができない状況でした。

接客のアルバイトを選んだ理由はありますか?

大学入学と同時にやっとなんかしなきゃ(バイトを見つけなきゃ)なって思いがあって。

接客アルバイトの恐怖心とか不安とかはいくらかあったんですけど、このまま吃音があるから話す場面とか環境を避け続けていいのかな…という疑問も自分の中にありました。

そこで社会に出ていくことに向けて「ある程度人と話すことになれていた方がいいな」という思いから、接客のアルバイトなら強制的にお客さんと話すので、まずそこで挑戦してみようかなと思いました。

アルバイトをやってみて、吃音で困ることはありましたか?

最初の頃はやっぱりコンビニの仕事自体が多くて覚えるのが大変でしたが、長く続けるにつれて覚えてきて。

レジもお客さんが半分ボタン操作してくれるようなタイプで、全部口頭ではなくお会計の会話を補ってくれます。

割と吃音が原因でトラブルになったとかはなかったので、なんとかなっています。

100%で伝えられない

画像提供:さがみさん
卒業制作『正しい門出』(プロジェクションマッピング/2025年)

大学の授業ではどうでしたか?

大学は美術系の授業が多いので、作品について発表する機会で困った経験があります。

自分が作った作品を講評会などで先生や他のクラスメイトの前で説明したり、質問をもらってそれに回答をすることがありました。

4人くらいでディスカッション形式の授業もありました。その時、自分の頭の中で考えていることはあったんですけど、それをいざ口に出すと話すのに時間がかかって他の人に迷惑をかけてしまうという思いがあって。

伝えたいことを全て伝え切れずにある程度は端折ら(はしょら)ざるをえないというか。吃音がでても完全に言えてないわけではないんですけど、全部は伝えられないというのがモヤモヤしました。

大勢の前で自分の作品を見せてそれについて説明するというのも、結構ハードルが高かったですね。

周囲に急かされることもあったのでしょうか?

周囲に急かされることはなかったんですけど、ある程度自分で自分をせかしているといいますか。

迷惑をかけたら嫌だなと思いがあるので、それがちょっと強く出ていたのだと思います。

吃音で困ることは日常でありますか?

飲食店の口頭注文とかが怖いですね。

口頭注文のお店だとそれだけで行くのを躊躇うこともあります。食券じゃないラーメン屋とか居酒屋とか、やっぱり口頭注文が怖いので、そもそも普段から行かないみたいな。

普通の人は口頭注文とかそこまで気にせずに「このお店美味しそう」とか、行きたいとこがあったら行けると思うんですけど。

みんなが躓かないところで躓いてることが、吃音からの苦手意識ゆえに損している部分かなって思うこともあります。ちょっとハンデに感じるというか。

吃音に関するポジティブな経験

画像提供:さがみさん
陶芸部でコンクール用に制作した作品(高校)
『美術なら-2020-』(陶土、油彩、アクリルガッシュ等/高さ130cm/2020年)

吃音に関するポジティブな経験はありますか?

吃音の悩みとかをSNSで発信し始めたのが、高校生の時でした。

X(旧Twitter)をのぞいたら同じく吃音で悩んでいる方がいっぱいいて、そこで繋がることができて、自分の孤独感はそこでだいぶ軽減されました

当事者会にはいつから参加していますか?

大学3年生のときです。2023年に東京で開催された「第5回うぃーすた全国交流会」が初めて参加した当事者会でした。

当事者会に参加したことで吃音の悩みの共有はもちろんなんですけど、いろんな人の趣味とか学校とかお仕事の話を聞くことができて。

自分が吃音だったからそういう機会があったし、自分自身への刺激になって視野が広がったことが嬉しかったですね。

旅する当事者会

画像提供:さがみさん
吃音交流サークル ゆ〜す会

主催されている当事者会があるのですか?

2025年からゆ〜す会』という少人数制の吃音当事者会を始めました。

対象年齢はその回によって変わりますが、基本は16〜39歳くらいのイメージです。時々年齢制限なしとか、いろいろバラエティ豊富な個性を出しながらできたらいいなって思っています。

6人とか4人とかそのくらいの少人数で開催しているので、一人一人と話せる時間が長く取れます。

ゆったりおちついて、一人一人との仲を深めることができて良かったという感想をもらうことも多いです。

当事者会を始めようと思ったきっかけはありますか?

うぃーすたの全国交流会に参加してからうぃーすた関東(吃音当事者会)にたびたび参加して、今年から運営スタッフにも加入しています。

うぃーすた関東の例会は主に東京都内で行われていて、20人ほど集まるんですけど、そこで同じ吃音を持ついろんな人とお話しして自分が得た喜びとか、楽しさをもっと多くの人に体験してもらいたくて

なかなか交流会とかって都心部が多いですよね。

確かに都心の方がアクセスも良いので、より多くの方が集まりやすいというメリットもあるのですが。

興味があるけどそこに距離的な面で行けないとか、日にちが合わなかったとか。そういうニーズに応えられるような会があったらいいなと考えていて。

少人数制なら行きたいという方もいるので、いろんな地域で少人数で集る場を提供したいという思いから立ち上げたのが『ゆ〜す会』です。

ゆ〜す会は全国で開催するのですか?

開催場所も関東だけでなく、自分自身も旅行気分でいろんな土地でやりたくて。

7月は大阪万博に行った次の日に、遊びがてら夜ご飯会みたいな感じでお好み焼きを食べました。

京都や宮城、愛知はライブで遠征する予定が決まっていて、その前後でやろうかと考えています。

吃音の専門的な団体とかではないんですけど、友達とご飯やお出かけに行くような、遊びに近い感覚でゆるく交流できたらいいなと考えています。

できるだけ敷居は低くもっていたいですね。

ロゴマークは自分が神奈川県に住んでいるので、神奈川県からダーツの矢みたいな「いろんなところに行きますよ」みたいなイメージで描きました。

https://twitter.com/Kitsuon_YOUTH

当事者会の運営で大変なことはありますか?

やっぱり自分自身もすぐ緊張しちゃうんで、当事者会の第一声というか、勇気を出すのが結構大変です。

参加してくださる方も緊張されている方はいると思うんですけど、そこは運営の自分も全く一緒で。

今は私を含め4人で運営しているのですが、各地での開催に協力していただける臨時クルーや現地クルーの方を募集中です。

現実的なお話しをすると、金銭面で北海道とか九州へ行くまでは時間がかかってしまうかもしれませんが、いつかやってみたいと思っています。

伝えたいこと

画像提供:さがみさん

吃音があるからこそコミュニケーションの場に苦手意識を持っている方もいると思いますが、逃げることは全然かっこわるいことではなくて

むしろいろんな逃げ道の選択肢を自分の中で作っていくことで、今悩んでいることとか、苦しんでいることから解放されたり、自分自身が生きていく活力となる出来事とかきっかけに出会えるかもしれないです。

自分も落ち込んでもうダメだって思う日も今でも沢山あるのですが、その度にまた立ち上がって歩みをやめなければ、そういった今の状況が良くなるようなきっかけに出会えるかもしれないと、思っています。

自分の吃音については、高校時代とかにもう悩みに悩み尽くして、最近は症状はあっても吃音が原因で深く悩むことがなくなってきて。

こんな言葉を使うといい受け止め方されないこともあるんですけど、自分自身の個性の一部といいますか、むしろ吃音があったおかげで美術の作品制作に打ち込むことができたり、吃音者同士の繋がりが生まれ、当事者会の立ち上げに挑戦できているので。

自分の強みとして、とらえていけたらいいかなと考えています。


インタビュー担当:きりん

当事者会って、会議室とか大人数で開催されるイメージがあって、参加のハードルを感じる方もおられると思います。

でも、さがみさんの主催されている「ゆ〜す会」では、おすしランチ会、食べ歩きお散歩会など、参加してみたい、と思うものばかりじゃないですか?!(私もおすし食べたい…)

さがみさんの当事者会をきっかけに、気軽に参加してゆるく繋がって、孤独に悩む吃音のある人が少しでも減ったら嬉しいですね。

少し延長しちゃいましたが、楽しいインタビュー時間をありがとうございました!

コメント・ご感想お待ちしております!

インタビューの協力者も募集中!
DMまたはお問い合わせからご連絡ください。

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この記事を書いた人

20代後半、軽度吃音当事者です。言語聴覚士免許取得。自身が吃音で辛い時に最も救われたのは、医療やリハビリではありません。当事者の方々の体験談をたくさん知ったことでした。

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